Sunday, June 23, 2013

負ける戦いなら挑まない - パット・ゲルシンガーが見せるクラウドビジネスへの静かな自信


「プライベートクラウドにおけるVMwareの最大のライバルはMicrosoft。リソース、技術力、市場での実績、いずれも十分に脅威となる」 - 6月19日、米サンフランシスコで開催されたイベント「GigaOM Structure 2013」において、VMwareのCEOであるパット・ゲルシンガー(Pat Gelsinger)はこう発言した。クラウドビジネスへの本格的参入が注目されているVMwareだが、クラウド市場の圧倒的巨人であるAmazonではなく、Microsoftの名前をライバルの一番手に挙げたことに、会場の空気がすこしざわめく。

ゲルシンガーはもちろんAmazonの強さを認めている。だがそうであっても「Amazonがクラウドの世界ですべてを取っているとは思わない」と断言する。とくにエンタープライズ企業がメインユーザであるプライベートクラウドおよびハイブリッドクラウドの世界においては、VMwareは競合をはるかに凌駕する強さを発揮できる自信があるという。「世界トップ10に入る銀行のCIOから"Amazonではダメだ、エンタープライズグレードというものをわかっていない"という声をさっき聞いたばかりだ」と語るゲルシンガーだが、そこにはVMwareだからこそ、エンタープライズのニーズをすくい取れるという自信がはっきりと伝わってくる。

この人がIntelのCEO候補だったのはわずか3年前のことである。デスクトップPCの世界からストレージのトップベンダであるEMCに移籍し、2012年にはその傘下であるVMwareのCEOに就任、いまやクラウド市場において世界でもっとも影響力をもつエグゼクティブのひとりとなった。今後、否が応でも"Father of Cloud"、ベルナー・ボーガス(Werner Vogus)率いるAmazon Web Servicesとその戦略が比較されることになるが、ゲルシンガー自身はAWSとの対決にはあまり興味がないように見える。VMwareが獲れる市場にAWSは入ってくることができない - その自信がAmazonの独占状態とも言えるクラウド市場をどう塗り替えるのか、世界中が注目している。